しばおの映画部屋

映画鑑賞記録

長いチュートリアルが終わった先に。『デューン 砂の惑星 PART2』の映画"体験" ※ネタバレあり

 2021年に公開されたフランク・ハーバート原作のSF作品『デューン 砂の惑星』(原題:DUNE、ドュニ・ビルヌーブ、2021)。物語が壮大すぎるが故に、映像化の権利をいくつものプロダクションが行き来したという逸話をも持つ。苦難の末に映像化が叶った本作の待ちに待った続編が公開されたため、ネタバレありで見た直後の気持ちを綴っていく。

 

※以下、『デューン 砂の惑星』『デューン 砂の惑星 PART2』のネタバレを含みます。

 

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 人間に長寿と叡智を授ける「メランジ」という資源を得るために、宇宙を収める皇帝はアトレイダス家を見渡す限り砂漠の星「アラキス」に派遣する。しかし、それは皇帝に反抗的なアトレイデス家を始末するための罠であり、一家は皇帝と、アトレイデス家に恨みを持つハルコンネン男爵(ステラン・スカルスガルド)によって滅ぼされてしまう。突然の災禍を生き延びた一族の末裔ポール・アトレイデス(ティモシー・シャラメ)は一族の敵を討つために、アキラスに住む原住民フレメンの協力を得ようと試みる。自分たちを搾取してきた一族の一人であるポールに対してフレメンは警戒心を解こうとしない。そこで、フレメンの男であるジャミス(バブス・オルサンモクン)とポールが、彼ら/彼女らのしきたりである決闘を通して自分の存在を認めさせようとする。

 この一連の流れがPART1にあたる『デューン 砂の惑星』(以下、パート1と呼称)のプロットである。公開日に映画館に足を運んだ私はハンス・ジマーの奏でる荘厳な劇伴をIMAXシアターで、全身で体感していたのを覚えている。同時に、「この映画の山場はどこだったのか」という疑問が頭の中の大半を占めていた。というのも、この作品は上映時間が155分と決して短い上映時間ではないからだった。本シリーズのような続編の公開を視野に入れた、いわゆるビッグバジェット作品というにはキャスティング、視覚効果や特殊メイクの面において申し分のないクオリティではあった。しかし、起承転結でいうところの”転結”が約二時間半をかけて「次回へ続く」だったことに呆然としていた。『スターウォーズ』シリーズでいうところの「遥か銀河の彼方、遠い昔~」、ゲームでいうチュートリアルを終えて、これから楽しくなるというところで「続きは製品版で」と終わる体験版をプレイしているようだった。それから約2年の月日が過ぎ、続きを見られるということで、公開日にIMAXシアターで鑑賞してきた。

 

 『デューン 砂の惑星 PART2』は、フレメンに認められたポールが彼ら/彼女らと行動を共にしながら自身のルーツを辿る前半部分と、皇帝に反旗を翻す後半部分で構成される。前者を修行パート、後者を決戦パートとすると、この構図は『スパイダーマン』シリーズ(サム・ライミ、2002~2007)を彷彿とさせるサクセスストーリーだ。特に本作ではヒロインにあたるフレメンの戦士チャニ(ゼンデイヤ)とポールが惹かれ合っていくメロドラマ的要素が存在する。パート1で繰り広げられたアトレイデス家とハルコンネン家の一族同士の確執、帝国とそれに服従する貴族といった緊迫した政治ドラマの裏で、2人のパーソナルな物語が進行していくのには現在放送中の大河ドラマ『光る君へ』と似たものを感じた。

 

 映像面に関しても、パート1で待ち続けたSFバトルをファーストカットから繰り出してくる。ハンス・ジマーの神秘的な劇伴とIMAXシアターの四方を囲むスピーカーが場内に響き渡り、映画館が揺れる。フレメンたちが乗り物として利用する砂虫(サンドワーム)が出現する前の無音の荒野に鳴り響く地響きから、地上に姿を現した後の音の暴力には、映画館で延いてはIMAXで映画を”体験”する感覚を久々に思い出した。パート1という長いチュートリアルを終えた先に、至高の映画”体験”をすることが叶った。もし、1回目を見て物足りなさを感じたなら是非IMAXで2回目を見に行くことを勧めたい。